海外へのビジネス展開を考えている企業にとって、そのチャンスを何となく感じ取っている場合でも、丁寧な市場調査はあらかじめ行っておく必要があります。

現地への市場調査を敢行することで、様々な情報を得られるため、市場開拓の成功率をグッと高められます。

今回は、海外での市場調査の方法についてや、市場調査の成功のポイントについてご紹介します。

海外の市場調査を行うべき理由

 

まずは、そもそもなぜ現地への市場調査を行うべきなのかについて、その理由を確認しておきましょう。

新しいビジネスチャンスの創出

一つ目の理由は、新しいビジネスチャンスの創出です。海外のマーケット事情については、実際に現地に住んでいてもわからない部分は多いものです。

日本国内においても、毎年全く新しいビジネスがいくつも開拓され、新たなマーケットの創出が行われていますが、海外においても同様です。

そこで、あらかじめ現地のリサーチを丁寧に行っておくことで、その国におけるトレンドを客観的に理解することができます。

また、ただ現地を訪れるだけではわからなかった需要や、その国消費動向についても数字から把握ができるため、新しいビジネスの可能性を見出すことも容易になります。

海外進出に最適なビジネスプランの策定

市場調査を行うべきもう一つの理由が、最適なビジネスプランを策定するためです。

海外進出を目指すとは一言で言っても、具体的にどこの地域に進出するのか、どんな商品を押し出して、どのようにアプローチするのか、という様々な課題があるため、スムーズに進めることは難しいものです。

そこで、あらかじめ現地の市場調査を行うことにより、その場所ではどんなものが必要されているのかなどの情報を把握できます。定量的な調査を複数の地域で行うことにより、各地域を比較し、自社にあった最適な進出先を見つけ出すことにも役立つでしょう。

海外の市場調査で得られる情報

 

次に、現地の市場調査を通じて、具体的にどのような情報を得られるのかについて、見ていきましょう。

現地の市場規模

一つ目の情報は、現地の市場規模です。そのカテゴリの商品がどれくらいの規模で市場を形成しているかを知ることで、潜在的な需要を理解することができます。

すでに大きな市場を形成している場合には、競合が存在し、彼らのシェアからどのように自社商品へと流れ込ませるか、ということを検討しなければいけません。

一方、まだそのカテゴリの市場が存在していない、あるいはマーケットが小さい場合には、競合相手もおらず、比較的自由に進出を進めることができます。

ただ、市場が無い、あるいはその規模が小さいという場合、そもそもその場所には商品のニーズが存在しないというケースもあります。需要と供給のバランスを考えながら、アプローチを検討する必要があるでしょう。

消費者の動向・ニーズ

その国の消費者が、どのような市場を形成し、どんなものを必要としているかを知る上で、市場調査は重要です。

自社の商品のことはひとまず忘れ、その国の消費文化や、トレンドを深く理解することで、どんなものが喜ばれやすいのか、ということを理解することができます。

その国のマーケットを理解し、その上で自社商品の可能性を検討することで、最適な進出のアプローチの策定につなげられます。

競合の存在

海外進出を進める上で、把握しておかなければいけないのが競合の存在です。その場所でどんな会社がシェアを占めており、どんな商品が売れる傾向にあるのかを理解することで、参入の余地を探ることができます。

例え強力な競合他社が存在するとしても、彼らが提供できんていない、新しい価値を現地に届けられることで、ニッチ層を埋められるようになるでしょう。

現地のルール

もう一つ大事な要素として、現地の文化やルールを理解する点が挙げられます。そもそもその地域でのライフスタイルはどのようなものか、祝日はいつあるのか、どんな日に消費が活発になるのかなど、彼らの生活についての理解を深めることが大切です。

一見参入の余地があるように見えても、単純に日本と現地では文化が異なるために、商品が売れていないだけ、というケースもあります。極端な例を挙げれば、雨の降らない地域でビニール傘は売れない、というようなものです。

日本と現地の文化の違いを理解し、円滑な進出を実現しましょう。

海外の市場調査を行う方法

 

海外の市場調査を行う方法としては、一般的に以下のような方法に分類されます。

デスクリサーチ

一つ目の方法が、デスクリサーチです。デスクリサーチは最も簡単な調査方法の一つで、インターネットを使った調査や、文献などを通じて情報を獲得するというものです。

その名の通り机の上からでも調査を行えるもので、現地のメディアや文献を参考にしながら、基本的な情報を集めていくのが良いでしょう。

専門的な情報や、リアルタイムのトレンドを把握するのには向いていない方法ですが、手軽に行えるだけでなく、基本的な情報を理解する上ではこの方法で十分対処できるでしょう。

インタビュー・アンケート調査

二つ目の方法が、インタビュー・アンケート調査です。日本で生活している現地出身の人へインタビューやアンケートを行い、その調査結果をもとに分析を進めるという方法です。

あるいは現地の企業などに委託し、インタビューなどを敢行してもらうこともできます。

その地域の消費者の生の声を聞くことができるだけでなく、これまでは想定していなかった、新しい可能性についても触れられるのが特徴です。

専門家などへのヒアリング

専門家へのヒアリング調査は、現地についての深い見識を得るために重要なリサーチです。現地文化の理解を深めるのはもちろんのこと、研究者は定期的に定量的な調査を行っているため、彼らの声をソースに調査結果を得る、ということも可能です。

日本の研究チームや大学教授、あるいは現地の専門家にヒアリングを依頼してみるのは効果的です。

調査員の派遣

実際に現地へ調査員を派遣し、リポートを依頼することも市場調査の一環です。現地のライフスタイルや、店頭に並んでいるもの、現地のトレンドなど、生の声を調査員の視点から、客観性と主観を交えて調査が行えます。

直接日本から派遣する場合だけでなく、現地の調査チームに依頼する、という方法も存在します。

海外の市場調査を成功に導くポイント

 

実際に海外への市場調査を成功させる上で、必要なポイントについても見ておきましょう。

ニーズに最適な調査方法の選択

一つ目のポイントは、ニーズに最適な調査方法を選択することです。

海外進出への検討を進める上で、現在どの程度の理解が進んでいるのかや、どんな地域に向けての進出を考えているのかなど、立ち位置を把握しておくことは大切です。

まだ候補先の国について検討が進んでいないのにもかかわらず、調査員を派遣したりインタビューを行ったりというのは、金銭的なコストや時間的なコストが必要以上にかかってしまうため、効率的とは言えません。

逆に、候補地やどんな商品を販売するかが決まっているのにもかかわらず、詳細な情報が得られないデスクリサーチばかりでは、正しいアプローチを進められない可能性もあります。

今必要な情報は何か、ということを第一に考え、リサーチを進めることがポイントです。

調査内容の適切なローカライズ

実際に現地の人に向けてインタビューやアンケートを実施する場合、その内容を適切にローカライズすることも大切です。

日本語で作った文面を機械翻訳に落とし込むだけでは、ネイティブが理解できない文面になっている可能性もあるため、その内容は人間の翻訳家に手掛けてもらう必要があります。

また、海外と日本では文化的な違いも大きいことから、現地では意味が通じない場合もあります。

例えば、年末年始の過ごし方などは、非常に地域性の大きな行事の一つです。日本では年末年始は大晦日と正月で、静かに休日を過ごすことが一般的ですが、中国では2月の旧正月に休暇を取ることが一般的ですし、欧米ではクリスマスまでをホリデーシーズンとし、年末年始は特段休日にしないケースもよく見られます。

文化的なローカライズが適切に行われているかについても、検討が必要です。

適切な対象者の設定

調査を行う上では、対象となる人物を正しく定めることも大切です。

これは海外調査に限った話ではありませんが、自社商品の潜在的な消費者となる人物や、現地のトレンドや市場に詳しい専門家を正しく選ばなければ、確度の高い情報は得られません。

あらかじめ調査対象者についても最適な人物を選び、確度の高い情報を集められるよう「調査のための調査」も実施しておく必要があります。

おわりに

 

海外市場は大きなマーケットを有しており、潜在的な可能性も高いことから、進出を検討する企業は増えています。

ただ、実際に進出を進める前に行っておきたいのが、丁寧な現地の市場調査です。適切な調査方法と対象者を選び、効率的な情報収集を実現しましょう。